身体拘束適正化の為の指針

登録日:2024年6月1日

1.身体拘束適正化に関する基本的な考え方

 身体拘束は、患者さんの自由を制限する事であり、尊厳ある生活を阻むものです。

 当院では、患者さんの尊厳と主体性を尊重し、拘束を安易に正当化することなく、職員一人ひとりが拘束による身体的・精神的弊害を理解し、拘束廃止に向けた意識を持ち、緊急かつ一時的でやむを得ない場合を除き身体拘束をしない診療・看護の提供に努めます。

2.身体拘束適正化のための体制

身体拘束(行動制限)最小化チームの設置

 身体拘束適正化のために、身体拘束(行動制限)最小化チームを設置し、毎月(8月休会)開催します。

 

(1)委員会の検討項目

  1.院内での身体拘束廃止に向けて現状把握及び改善についての検討をします。

  2.身体拘束を実施せざるを得ない場合の検討をします。

  3.身体拘束を実施した場合の代替案、拘束解除の検討をします。

  4.身体拘束廃止に関する職員全体への指導・教育をします。

 

(2)身体拘束(行動制限)最小化チームの構成員

  脳神経内科部長・副看護部長・認知症認定看護師・医事課・薬剤科・臨床検査科・リハビリテーション科・栄養科・各病棟看護師

3.身体拘束廃止に向けての基本指針

1)身体拘束の定義

 医療サービスの提供にあたって、患者さんの身体を拘束しその行動を抑制する行為とします。

 入院患者さんの行動を制限する具体的行為にあたるものとして、厚生労働省が「身体拘束ゼロへの手引き」(平成13年3月)の中であげている行為を下に示します。

 

(1)徘徊しないように、車いすや椅子・ベッドに体幹や四肢をひも等でしばる。

(2)転倒しないように、ベッドに体幹や四肢をひも等でしばる。

(3)自分で降りられないように、ベッドを4点柵で囲み柵をすべてひも等でしばる。

(4)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、四肢をひも等でしばる。

(5)点滴・経管栄養等のチューブを抜かないように、または皮膚をかきむしらないように、手指の機能を制限するミトン型の手袋等をつける。

(6)車いす・椅子からずり落ちたり立ち上がったりしないように、Y字型抑制帯や腰ベルト、車いすテーブルをつける。

(7)立ち上がる能力のある人の立ち上がりを妨げるような椅子を使用する。

(8)脱衣やオムツ外しを制限する為に、介護衣(つなぎ服)を着せる。

(9)他人への迷惑行為を防ぐ為に、ベッド等に体幹や四肢をひも等でしばる。

(10)行動を落ち着かせる為に、向精神薬を過剰に服用させる。

(11)自分の意思で開けることのできない居室等に隔離する。

(12)離床センサーやセンサーマット等を使用する。

2)やむを得ず身体拘束を行う場合

 患者さんまたは他の患者さんの生命または身体を保護するための措置として、以下の3つの要素の全てを満たす状態にある場合は、患者さん・ご家族への説明同意を得た上で例外的に必要最低限の身体拘束を行うことがあります。

 

(1)切迫性:患者さんまたは他の患者さんの生命又は身体を危険にさらさないこと。

(2)非代替性:身体拘束その他の行動制限を行う以外に代替法がないこと。

(3)一時性:身体拘束その他の行動制限が一時的なものであること。

3)身体拘束禁止の対象とはしない具体的な行為

 当院では、肢体不自由や体幹機能障害があり残存機能を活かすことができるよう、安定した体位を保持するための工夫として実施する行為については、身体拘束禁止の行為の対象とはしないこともあります。

(複数人で検討した上で目的を明確にして、看護記録に記載します)

 

具体例

(1)整形外科治療で用いるシーネ固定等

(2)転落防止の為の4点柵使用

(3)点滴時のシーネ固定

(4)自力座位を保持できない場合の車いすベルト

(5)身体拘束をせずに患者を転倒や離院などからのリスクから守る事故防止対策(離床センサー等)

        など

4)身体拘束を行う場合の対応

 緊急・やむを得ず身体拘束を行う場合は、医師をはじめ身体拘束最小化チームを中心に十分な観察を行うと共に経過記録を行い、できるだけ早期に拘束を解除するように努力します。

 

 具体的に以下の手順に従って実施します。

(1)記録、集計、分析、評価を専用の様式を用いて、その態様・日々の心身の状態等の観察を記録します。

(2)患者さんやご家族に対しての説明を行います。

  1.身体拘束の内容・目的・理由・拘束時間または時間帯・期間・改善に向けた取り組み方法を説明し、十分な理解が得られるように努めます。

  2.身体拘束の同意期限を越え、なお拘束を必要とする場合については、事前にご家族に患者さんの状態等を説明します。

  3.身体拘束要件に該当しなくなった場合には、速やかに拘束を解除します。 

(3)カンファレンスを実施します。

  1.身体拘束最小化チームの構成員があつまり、「切迫性」「非代替性」「一時性」の3要件の全てを満たしているかどうかについて確認します。

  2.当院他診療科医師と情報共有して連携を行い、必要時に診察を依頼します。

  3.拘束による患者さんの心身の弊害や拘束を実施しない場合のリスクについて検討し、身体拘束を行う場合の、拘束の内容、目的、理由、時間帯、期間等について検討します。

  4.早期の拘束解除に向けた取り組みの検討会を行います。

5)その他の日常ケアにおける基本方針

 身体拘束を行う必要性を生じさせないために、日常的に以下のことに取り組みます。

 

(1)患者さん主体の行動、尊厳を尊重します。

(2)言葉や応対などで、患者さんの精神的な自由を妨げないよう努めます。

(3)患者さんの思いをくみとり、患者さんの意向に添ったサービスを提供し、多職種協働で丁寧な対応に努めます。

(4)身体拘束を誘発する原因の特定と除去に努めます。

4.身体拘束廃止、改善のための職員教育

 医療に携わる全ての職員に対して、身体拘束廃止と人権を尊重したケアの励行を図り、職員教育を行います。

 

(1)毎年研修プログラムを作成し、1年に1回以上の学習教育を実施します。

(2)新任者に対する身体拘束廃止、改善のための研修を実施します。

5.この指針の閲覧について

 当施設での身体拘束適正化のための指針は当院マニュアルに綴り、職員が閲覧可能とするほか、入院患者さん、ご家族の求めに応じて施設内にて閲覧できるようにすると共に、当院のホームページへ掲載します。

 

 附則:令和6年3月1日

 この指針は、令和6年6月1日から施行する。